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始まった曲に合わせて揺れながら、アンドリューに小さく『大丈夫そう?』と確認すると、『うん。いい人みたい』と、にこっとしている。
アンドリューの隣で踊っているその男の人に向きながら、どーも、と声をかけると、踊りながら、ぺこっと頭を下げてくれた。
けらけら笑いながら、酔った足取りでちょっと古い洋楽に合わせて一緒に三人で踊る。
あはは。
楽しい。
「葵ちゃん」
急に背後から声をかけられて振り返ると徹君がいた。
あんまりにびっくりして、「きゃ!」と言ってしまった。
「びびった?ごめん」
徹君は、黒い細身のスーツに白いシャツで、ネクタイを取っているけど、いつもよりなんだかドレッシーだ。
表彰式にでていたんだから、それは、そうなんだろうけど、薄暗いバーのなかで、とてもおしゃれだった。
横浜にいるはずの、徹君。
踊っている人の邪魔にならないように、徹君の手を取って、端に寄った。
「どうしたの?」
「二次会早めに抜けて、こっちに来た」
「葵ちゃん、踊るんだ」
からかうように笑っている。
いつから見られていたんだろう。
「下手だけど。誘われたら、踊るよ」
音楽に負けないように、ちょっと背伸びして答えた。
徹君がふわっと笑って、かがみこむと、耳に顔を寄せる。
「今日、色っぽいね」
声と息が耳にかかって、一気に耳まで赤くなった。
徹君、足取りはしっかりしているけど、すこし酔っているみたいだ。
授賞式から、送別会かねての二次会にでると言っていたから、もう結構飲んでいるんだろう。
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