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話しているうちにゆっくりとした曲になっていている。
「じゃ、俺と踊って」
徹くんがふざけて私の両手を取って引き寄せる。
片手を腰に回してゆっくりと揺れる。
踊るっていうほどでもないけど、徹君に支えられて、ふわりふわりと揺れて回る。
一緒にふざけてくれるのがうれしくて、はしゃいでしまう。
くるくるしすぎて目が回りそうになって、けらけら笑って席に戻った。
徹君がカウンターで飲み物を買ってテーブルに着き、繭ちゃんに挨拶すると、繭ちゃんがニコニコして、
「葵がお世話になってます」
と親みたいな挨拶をした。
私から徹君の話を聞いているから、ようやく会えたという感じらしい。
アンドリューもこっちに戻ってきて、徹君と軽くハイファイブしている。
繭ちゃんがそのすきに私の耳に
「お迎えなんて、優しいね。なんか、葵の彼氏もかなり見られてるし。王子と三人でBLにしたい」
と笑っている。
想像しそうになって、「やめて。やばい気がする」と繭ちゃんに突っ込んだ。
想像だけでも危険な匂いがする。
徹君が田口君にさっきはすみません、みたいなお礼を言っている。
私が携帯に気が付かないでいるうちに、ここにいる、という連絡を取ってくれたらしい。
男の人同士で少し会話を交わしている。
アンドリューはさっき踊っていた人といい感じなので、そろそろ私たちは帰ることにして、田口君に繭ちゃんを送ってもらうことにする。
「繭ちゃん、王子、軽いからね」
一言しっかり忠告する。
「ははは、それは十分雰囲気で伝わってくる。大丈夫」
笑っているけど、どうだろう。
田口君にも、「繭ちゃんに、変なことしないでね」というと、横目でにらまれた。
アンドリューに先に帰ることを伝え、ホテルの場所を覚えているか確認する。
『大丈夫?やばい人だと思ったら、サッサと逃げるんだよ』と言ったら、『はいはい、お母さん』と笑った。
お母さんじゃないけど、連れてきたんだから、心配じゃん。
アンドリューに、ハグをして、バイバイした。
田口君と繭ちゃんは、店の外まで一緒に出て、タクシーに乗り込ませて見送った。
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