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ホテルまで、夜の街を手をつないで歩く。
徹君は片手にスーツを入れるバックや鞄なんかを肩に背負って、片手で私の手を取ってくれている。
細いヒールが路上の穴に入らないように、気を付けながら、コツコツとヒールで歩く。
田舎ではもう少しだけ夜は秋の気配がするのに、東京の夜はまだ蒸し暑い。
長い一日だった。
それを忘れるくらいに面白かったけど。
ぽつぽつと今日の出来事を徹君と話す。
「横浜のパーティー、楽しかった?」
「んー、まぁ。久しぶりに先輩たちと話せたのは、良かったけど。知らない人も多かったな」
「ご飯は?おいしかった?」
「ん。立食みたいなので、おいしかったよ。会場、ホテルだったし。」
華やかなスーツ姿でパーティー会場に立つ、徹君はかっこよかったに違いない。
「葵たちは、晩御飯はどうしたの?」
「えっとね、メイドカフェいったの」
というと、徹君があはは、そうか、と笑った。
「どうだった?」
「面白かった。十歳くらい若い子に、お嬢様お帰りなさいって言われたよ」
「まじか」
「で、注文したものが来ると、魔法かけてくれるの。キュンキュンビーム」
「なんじゃ、そりゃ」
「徹君もやられたら、はまるよ。しらないよ」
と笑った。
「葵にやられたら、はまるかも」
横目でこっちを見て、笑っている。
「え、キュンキュンビーム?」
「それ。どうやんの?」
こうだよ、と、手を放してメイドちゃんがやってくれたように、ハートを両手で作って「キュンキュン、ビーム!」
と言いながら、飛ばすふりをする。
「あはは。やってくれるのか」
徹君が笑っている。
「うん。お店でも繭ちゃんたちとやったの。今日は色々面白いことやって、元気になった」
「そうか」
というと、また手をつないでくれた。
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