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彼女はビール代を受け取るのを断ると、カウンターからお会計を済ませ、バーチェアからぴょんと下りて、ぐらついた。
慌てて腕をとって支えると、小柄な彼女の頭はヒールをはいても胸の位置だった。多分150cm半ば。小さい。
俺のシャツに軽く手を添えて、体のバランスを取ると、申し訳なさそうに謝った。
耳の縁が紅い。
とっさになんでもないような振りをしたが、少し胸の奥がざわついた。
細いヒールで足元が危なっかしい彼女を車に押し込むと、今度は助手席に乗ることの心配をしている。
仕事にも使う車で、誰が助手席に乗るかとか気にしたことがない。
そう伝えると安心したのか、楽しそうにおしゃべりを始めた。
彼女が住んでいるという古民家の話が弾む。
田舎の古い家は最近若い世代に人気が出つつあるけど、問題点も多く、住みづらさに諦める人も多い。
改築予算もあまり無いという彼女の話が気になって次の週末見に行く約束をする。
「優しいねぇ」とかまた親戚のおばさんみたいなコメントをして、ニコニコしているかと思ったら、そのうち
「徹君、モテそうだね」
「はぁ、愉しかった。」
「ね、ね。お腹いっぱいー」
「アイスは抹茶かバニラだよねー」
とか、最後は一人ごとのような訳のわからない事を色々言って、寝てしまった。
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