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話せばわかってくれる、なんて、私の甘い考えだった。
確かに、付き合っている彼がいるのに、婚活に出かけるなんて、どんな女だろうか。
優しい徹君でも、さすがにあきれたらしい。
あの日、この話をしてから、今日まで三日、連絡がこない。
徹君にこの話題を持ち出す勇気がなくって、先延ばしにした。
でも、キノコ狩りの前にはさすがに言わないとまずいだろうと、3日前、一緒にご飯を食べた後、なるべく自然に「週末、キノコ狩りに行く」と話題をもちだした。
徹君は、「珍しいね。面白そう」とにこやかに話題に乗ってくれた。
「町でやる、婚活イベントなんだけど、父に頼まれて、レポートを書くの」
「え、婚活イベント?」と徹君が驚いたように、こっちを見た。
「うん。地域情報誌、あるでしょ。あれに体験談を書いてほしいって言われて」
父に頼まれたという理由を言い訳がましく言ってみる。
「あぁ、そういう」と少し考えてから、「おじさんに、俺のこと、言ってないの?」という徹君の声が少し硬かった。
「え、言ってない。言うとすぐ紹介しろとか、ややこしいことになりそうだから」
田舎の年ごろの彼女の家に挨拶したら、どんな話になるのかなんて、全て説明することもないだろうと、すこし誤魔化した。
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