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家の前まで来て、黒いハッチバックが止まっているのに気がついた。
心臓を掴まれたように、息苦しい。
あんなに会いたいと思っていたのに、急に怖くなってきた。
徹君はなんて言うのだろう。
もう終わりだって言われたら?
そして、それ以上に私が怯えたのは、もし万が一、徹君が本気で私の行動に指示できると思っていたらどうしようという事だった。
徹君は、私の事をわかっていると思ってる。
細かい事だけど、例えば合コンに「行かないで欲しいと思っている」と言うのと「行くな」と言うのでは雲泥の差があった。
私は、そういう事にとても敏感だ。
徹君に恋をしている。
それが消えてしまうのが一番怖かった。
学生の頃、バイト代を貯めて行った海外旅行の帰り、タクシーの運転手さんが私が一人旅に行ったと知った途端、「女の子で一人旅?俺の娘だったら、絶対に行かせませんけどね」と言った。
もちろん親御さんの心配から来ている言葉だと分かったけど、寒気がして「あなたの子供でなくて良かった」と言いそうになる口をつぐんだ。
私はそういう子だ。
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