婚活

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落ち着かないまま、仕事に集中して、なるべく考えないようにして過ごした。 ちょうど仕事では、新しいプロジェクトを立ち上げたところで、忙しく時間が過ぎていく。 普段、叔父の建設事務所では、新築、増築の一般住宅の設計が多いのだけど、時々店舗の設計も行う。だが、少し前に、叔父が「これ、お前がやってみないか?あんまり時間がないけど」と県内の駅建設のコンペの話を持ち込んできた。 車で三十分ほどの山間の駅が、取り壊し、新築されることが決まっている。小さい駅だけど、鉄道会社との仕事になるため、2,3年後の建設の計画だ。そのデザインコンペに、参加することになった。 こういう大掛かりな仕事は、デザインが選ばれて、計画が進行しなければ、コンペ自体に参加費がでるわけでもないので、それにかけたすべての時間が無駄になる。叔父のような田舎の小さなデザイン事務所では、普段、あまり手を出せない。 こういう余分な、挑戦をさせてくれるというのは、大きな商業施設も扱う横浜の大きなデザイン事務所から、住宅が専門の叔父会社へ移った俺への叔父の気遣いだろう。 自分の時間は減るけれど、できるだけ普段の業務に差し支えないようにして、挑戦したいと思っていた。 ものすごく大きなプロジェクトと言うわけでも無いけれど、これくらいのプロジェクトに設計士として携われたら、葵は親御さんに紹介出来ると思ってくれるのだろうか。 すぐに葵に伝えたいとおもうのに、なんと切り出していいのかわからない。
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