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優香さんがすこし考えながら、口を開く。
「お家によるけど、お堅いお家だと、30歳くらいになると、逆に余計に紹介しにくいんじゃない?」
葵の実家は、お父さんが公務員で、お母さんは自宅で家庭菜園的な農業をしている、この辺では普通の家だと聞いている。
だけど、初めてお茶を出された時、茶托や湯冷ましをつかってお茶をいれたり、若い人にしては、お茶の出し方がしっかりしていると思った。
きっとそれなりにしっかりした家なんだと思う。
「今まで彼を紹介してこなかったようなお家だと、彼を紹介するなんて言ったら、ご両親はきっと結婚の挨拶に来たのかと思うでしょ?」と諭される。
「徹君なんか、素敵な方が来たって、すぐに包囲されちゃうわよ。それでいいなら、いいけど、その覚悟はあるのか?ってことでしょう?」と笑っている。
「っていうか、葵さん、徹君が困っちゃうのが嫌なのよ、きっと。気を使っているんだと思うけど」
葵と同じ世代の女性に説かれて、もうテーブルに突っ伏したくなる。
情けねぇ。
兄が半笑いでこっちを見ているので、「はぁ。そんなものですかね」とごまかしておいたけど。
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