婚活

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風呂の中で葵を後ろから軽く抱きしめていると、突然、小さい声で「心配かけたのは、ごめんなさい」と言った。 「ん。かわいいから、勝手に心配してるだけ」 「はい」と頷くと、「徹君が変わった趣味で良かった。ははは」と笑って、それ以上、この件については話さなかった。 ドライヤーで髪を乾かしてあげる。 その間も俺の腕の中に、ぴったりとくっついている。 寝室にあがり、腕の中に葵を抱く。 小柄な身体がぎゅうっと抱きついてくる。 愛らしい人だ。 こんな風に抱きつかれたら、いつもこの人をどうにかしてしまいたいという扇情的な気持ちになるのだけど、今日はゆっくり休ませてあげたい。 寝不足の上、今日のイベントで歩き回って、疲れているようだし、さっきあんなに泣いたので目がまだ赤かった。 「疲れたでしょ。お休み、ね」と顔にかかった髪の毛を耳にかけるように、頭を撫でた。 するとぎゅっと顔を俺の胸に埋めると、「ヤダ。抱いて欲しい」と言った。 その言葉にカッと全身の温度が上がる。 葵にこんな風に直接的に誘われたことは今まで無い。 「いいの? そんな事言ったら、知らないよ」 威してみても、ぎゅうっと抱きついてじっとしている。 少しずつ、その身体を解くように、なるべくそっと、壊さないように、葵の身体にキスを落とす。 触れて、誑かす。 葵の息が少しずつあがるのが、ものすごく欲情を掻き立てる。 ゆっくり、静かにひっそりと愛を交わす。 まるで何処までも融けて、二人が混ざりあうように。 終わりに身体を離そうとすると、葵が腕を解かないでぴったりとくっついている。 「ずっとくっついていたい」と、あまりにも甘えたな事を言う。 この3日、相当、悲しい思いをさせたらしい。 一旦身体を離して、眠れるように腕の中に抱き直す。 脇ばらに鼻をこすりつける位ぴったりと嵌まり込む。 「ずっとくっついていたかったら、葵、俺の奥さんになればいい。……なる?」 ポロッと出た言葉に、葵が硬直したのが分かる。 少しして、葵は「徹君が明日もそう思ってたら、なる」とだけ言うと、お休みと勝手に寝てしまった。 男の戯言に傷つかない様に、予防線を張っているらしい。 俺は、明日になっても、そう思っていると思う。
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