婚活

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*** 昨日の夜、私は徹君にわがままばかり言った。 ほんの3日だけど、喧嘩して、徹君が私のそばからいなくなるのではないかと不安になったせいか、一緒にいたいと思う気持ちが堰を切ったように止められない。 想いが寄り添うという、穏やかなことじゃなく、とても幼稚で原始的な、とにかく、くっついていたいという気持ちに支配されている。 抱き合った時も私はただ徹君の一番近くにいきたくて、二人が混ざって、境界線が無くなるほどくっついていたいと思っていた。 そんな私を徹君は優しく抱いた。 夜の終わりにまだ身体にぴったりとしがみついている私に、徹君は呆れるかと思ったら、「ずっとくっついていたかったら、葵、俺の奥さんになればいい。なる?」と思いついたように、ぽろりと優しく言った。 びっくりした。 私はずっと一緒にいたいと思っているし、それがいつか結婚という形になるなら、一番いいだろうと思うけど、徹君はそう思ってくれているのだろうか? あんまりにあっさり口に出されて、本気なのか分からない。 長い夜の果てのリップサービスなのかもしれなかった。ぐずる女の子をあやす様な言葉だった。 「徹君が明日もそう思ってたら、なる」 色々考えるには、頭も体も疲れすぎていた。朝日が差すまで、夢の中で徹君のお嫁さんになった。
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