仰ぐ陽

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徹君は本気だと言ったけど、あまりに唐突で、信じがたい。 本当なら、嬉しくって、畳の上でゴロゴロ転がっちゃうほど、嬉しい。 変な期待をして痛い目に合わないように、自分にブレーキをかけて、なるべく結婚や将来なんて考えないようにしてきたけど、ずーっと一緒にいたいとは思っている。 徹君が毎日、私と同じ家に帰ってくるというのはとても魅力的だ。 同棲すれば良いのだけど、この田舎で、結婚しないのに同棲する勇気はない。 私は、それほど恋愛経験が多くないけど、徹君が今まで会った誰よりも、ものすごく好きだ。 あんなに傍に居たいと思う人はいないし、大人になってあんなに人前で泣いたのは初めてだ。 自分をさらけ出せて、その腕に抱きしめられたらどこにいるより安心できる人。 その人とずっとおじいさんとおばあさんになるまで、一緒にいられる約束があるのなら、そうしたいに決まっている。 徹君が旦那さんかぁ。 その響きの甘さに、自分で想像しておいて、畳の上でのたうち回る。 やばい。 浮かれちゃう。 一瞬ゴロゴロしてしまったけど、正座して落ち着こうとする。 私が婚活イベントに行った上に、昨日、情緒不安定な泣き方をしたので、そんなに焦っているのかと思われた可能性もある。 徹君にちゃんと話をするまでは浮かれてはいけない。
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