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どこがやばいんだろうか。
そう思って、よく見ると、パネルの下部、グラフィックの下に、『葵:仰ぐ陽』と印刷されていた。
プロポーズの時に言われたことを思い出して、はっとするのと、顔が赤くなるのと同時だった。
徹君の顔を見ると、すこし本人も照れているようで、ビールを飲んでいる。
「ほら、やばい」と樹君が揶揄う。
「勝ったんだから、かっこついているだろう」
叔父さんが笑っている。
なるほど、スタッフの皆さんが私の名前を知っていたわけだ。
先ほどの女性が「徹君のプレゼン、最高でしたよ。気合入ってた」とほめて、「デザインコンセプト名、この駅のどこかに記念版でつくと思いますよ。すごくないですか?」と笑った。
「葵、帰ろう」
徹君がいじられるのが嫌になったのか、帰り支度をしている。
叔父さんとスタッフに頭を下げて、樹君に「またね」と挨拶した。
「あいつ、葵ちゃんのことになると必死だから。仕事は、しっかりしてるし、多少、イタくっても、多めに見てやって」
いじわるに言いながらも、お兄さんらしい。
「兄貴、うっさい!」
いつもより砕けた様子の徹君が言い返して、「じゃ、失礼します」と他のスタッフに頭を下げると、私の手を引っ張って、玄関に向かう。
私も手を引かれながら、慌ててもう一度「失礼します」と振り返って皆さんに頭を下げながら、店を出た。
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