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どうぞ、と近所の和菓子屋さんで買った草餅と、日持ちするお菓子が数点、かんたんな浅漬けなどを並べる。
地元ではお客様のお茶には、数点のお茶うけのお菓子に、お漬物が並ぶことが多い。
実家は役場で働く父に来客も多く、子供の頃から忙しい母を手伝ってお客様へお茶を出している頃から、身についた癖だ。
地元で育った徹君にも馴染みの光景だろうけど。
「わざわざ、すみません。いただきます」
「どーぞ。国道のとこの、春木屋の草餅、美味しいよ。食べて」
ケーキも和菓子も自分で作るくらい大好きで、東京では週末にケーキ屋さんや和菓子屋さん目当てにあちこちに出かけるのが趣味だったけど、地元のヨモギ餅はとても美味しいと思う。
「あ、あそこの。有名ですね」
春木屋は、元々和菓子屋だけど、よもぎ餅の人気がすごく、今じゃよもぎ餅しか売っていない小さな店だ。今にも潰れそうな小さな店で、おじいさんが天然のヨモギをつんで毎日お餅にしている。
ああいう自分の職を持つ人に憧れる。
「佐藤さんは、改築っていうより、修繕ですよね」
家の話に戻って、あれこれと家の修繕点を話す。
貯金はほぼ頭金へ回したから、あまりお金がない。
「直さないとまずい所があったら、教えてほしくって。それで、自分でできるとこは自分でやるから、プロにやってもらったほうがいいところはプロにお願いするって感じで」
「佐藤さん、DIYとか出来るんですか?」
「あんまり経験はないけど、手先は器用だから、動画サイトがあれば、ある程度は」
トオル君が納得しかねる表情でいるので、「ほら、障子は張り替えたよ」と言ったら、「障子は誰でも張り替えられます」
ピシャリと言われてしまった。
「頑張ったんだけどなぁ」と食い下がると、「ははは。何だそれ」と目を細めて笑ってくれた。
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