挨拶

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夕食では、徹君は父にビールをさんざん飲まされていた。 浮かれた父と母は、徹君に「飲みなさい」「食べなさい」と色々と勧めて、断れない徹君はかなり大変だったと思う。 父と母は、徹君の仕事の話を色々聞いた後は、私の子供のころの失敗談やら、私が小さいころからどれだけ強情であったかという話、大学時代に海外へ行きまくり、どれだけ親を心配させたかという苦労話を散々徹君に聞かせた。 そんな話を聞かされて私は、恥ずかしくって赤くなったり、徹君が私に引いているのではないかと青くなったりした。 「また連れて来るから」と両親をなだめて、私の家に二人で帰った。 「大変だったね。大丈夫?」 最後はずいぶん砕けて、両親とも仲良くなっていたようだったけど、家について徹君に様子をうかがうと、二人になって、ほっとしたようだった。 「ん。やー、まじで緊張した。けど、挨拶できて、よかった。俺、大丈夫だったよな?」とまだ少し心配している。 「うん。すごく大丈夫。百点満点。ありがとう」 「ははは。それは、よかった」 ネクタイを解くと、私が渡したお水をグイっと飲みほした。 「明日は、俺んち、よろしくお願いします」と徹君が笑っている。 次は私が緊張する番ってことだろう。 「あ、っえ、明日ってさ、私が徹君と結婚させてください、って徹君のお父さんにいうの?……違うよね?……え?そう?」 何もかも初めてなんだから、分からない。 なんて挨拶するんだろう。 慌てる私を徹君がニヤニヤしてみている。 こらえられないというように、あはは、と笑って、ぐっと手を引かれて、徹君の腕の中に抱き留められる。 私の腰の後ろで手を結んで、私を囲っている。 「あー、明日は、ただ俺の隣に座っててくれればいいから」 酔っぱらっている目でにこにこしている徹君はかわいい。 「葵ちゃんは、俺の隣にいるだけで、100点」 あ、酔っぱらっている目でじっと見つめる徹君は色っぽい。 「徹君、採点、甘いね」 「ははは。俺は葵にずっと甘い。奥さんになるんだよ。俺の妻。分かってる?」 へらっと笑って、「やばい。言葉の響きがやばい」とけらけら笑っている。
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