挨拶

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朝起きて、徹君が隣にいるというのは幸せだ。 昨日起きた楽しい事がすべて夢じゃないかと怯えなくて済む。 まだ寝ている徹君を見ているのが好きだ。 徹君は睫毛が長い。 お布団から少し肩が出ちゃっている。 いつも私をすっぽり包んでしまう肩が好きだ。 掛け布団を少し引っ張って、徹君の肩まで隠す。 そうすると私は少し掛け布団に埋まってしまうのだけど。 徹君の腕がぬっと動いて、私を抱き寄せる。 私より体温が高いのだと思う。徹君はいつも温かい。 幸せだと思う。 少し冷え込んで、お布団から抜け出したくないと思うような朝に、好きな人の腕の中で、ぬくぬくしている。 先に起きて朝ご飯を作ろうかと思ったけど、もうちょっとこのまま徹君と寝ちゃおうかなぁ。 瞼を下ろしかけたら、私を抱きしめていた徹君の手が私の背骨を数える様になぞり始めた。 優しく指先が骨を一つ一つ確かめている様だ。 首まで上がって、少し、くしゃりと髪をイジる。 徹君が起きた様だ。 「徹君、おはよう」 「ん。まだ寝てよう」 まだ寝てよう、と誘う割には、背骨を伝う指先が艶めかしい。 指が背骨をそっと伝う。 腰骨までゆっくりと下がる。 そしてゆっくりあがってくる。 もうちょっと眠れるように、優しく撫でられているのかもしれないけれど、私を寝かさない程度に、絶妙に扇情的だ。 何回も繰り返す指先の動きに私はすっかり煽られているのに、徹君の瞼は閉じてるし、寝息は静かだ。 寝ている人にあやされて、変な気になっている私、恥ずかしすぎる。 背骨を伝う指先に全神経が集中してしまう。 腰骨に近づくたびに、息が漏れそうになる。 別の事を考えようとして、昨日の夜を思い出して自爆する。 「エロい顔も可愛い」 「葵のそういう顔、俺だけに見せて」 徹君は昨日随分酔っていて、溶ける様な甘い事ばかり言っていた。 徹君がそういう言葉を口にする時、徹君のほうがものすごく色っぽい。 夜の顔はそれこそ他の誰にも見せてほしくない。
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