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でもこう思い出してみると、夜の終わりに徹君がどういう顔をするのか、私はよく覚えていない。大概、私はもう朦朧としているか、目を瞑ってしまっているか、多分徹君にしがみついていて、それどころじゃない。
どんな顔をするのだろう。
そんな事を考えていると、余計にその指にもう少し、どうにかして欲しくなる。
徹君の胸に顔を埋める。
指先が腰に下がる。
もう徹君にわかって欲しくなって、息を漏らすのを我慢するのを止めた。
「葵?」
あぁ、もう恥ずかしすぎる。
もうちょっと寝ようって言われたのに、背中を撫でられただけ、スイッチ入ってる私。
顔を埋めたまま、ちゅっと徹君の肌に口づけてみる。
もうどうかわかって下さい。
くすっと徹君が笑う。
わ、笑われた!?
「葵、したいの?」
半分寝てた人にしてはしっかりした声。
寝たふりで、誂われていたらしい。
あー。もう、もう。
「意地悪。徹君がなんかしたくせに」
「俺、まだ何もしてないよ」
あっけらかんと言ってくる。
「した」
なんと説明していいのか分からない。
ちょっとむっとして言い返すと、徹君が、ははは、と笑って
「した。バレたか。葵ちゃんがそういう気分になってくれないかなぁ、と」
クスクス笑っている。
「そういう気分になってくれた?」
色っぽい目で、見つめられて、そんな事を言われたら、もう駄目だ。
「うん。なった」
返事するか、しないかのうちに徹君がくるっと私の上に覆いかぶさる。
首すじにキスが降ってくる。
朝の光の中で抱かれるのは、背徳的だ。
すぐに息があがる。
私を抱く徹くんの肩がカーテンから差し込む朝の日差しに眩しい。
男の人の体だと思う。
はっと、さっき考えていた、徹君はどういう顔をするのかという事を思い出す。
顔をみると、徹くんは激しい事をしているのに、熱の入った色っぽい目で私をじっと見ている。
目が合うとふと笑って、「どぅした?」と聞いてくる。
「徹が最後どういう顔してるか、知らないなと思って」
そのまま思っていたことを言うと、一旦動きを止めた。
「は? 何、それ、恥ずい!」
「葵、それ、恥ずいから、もう、こうね」
と言うと、一旦身体を離して、ぐるっと私を後ろ向きにする。
後ろ向きにされるのは、朝の明るい部屋では、ものすごく恥ずかしい。
徹君は自分の顔を見せてくれないつもりらしい。
「これ、私が恥ずかしい」
と反論しても、
「それが、良いんだよ」
と笑って背中にキスをする。
自分の息継ぎに必死になりながら、徹君の息使いに耳をすませる。
私が溺れているのの何分の1でいいから、徹君が私に溺れてくれていたらいい。
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