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身体をやっとで起こして、携帯で時間を見て、ベットから慌てて起きた。今日は昼前に挨拶に行くのに、手土産を買いに行かないといけない。
足に力が入らず、すてっとその場にコケた。
「あー、葵、大丈夫?」
すぐに徹君が回って抱き上げてくれた。
ポンと私をベットに戻すと、
「ちょっと寝てて。俺がシャワー先にして、朝飯、用意するし」
と下に行ってしまった。
言われるがままにしばらくうとうとしたら、「葵。起きれる?」と徹君がベットわきに来ている。
「ごはん、できた。っていってもトーストとコーヒーだけど」
私の髪の毛をかき上げてくれる。徹君はもうシャワーをあびて、パーカーとチノパンをはいている。
ざっと服を着て、下へ行く。さっきこけたので、心配してか、徹君が手を取ってくれた。
トーストをかじりながら、
「手土産、ケーキでいいかな?和菓子もいいけど、遼ちゃんがいるし、ケーキのほうが好きよね、きっと」
と聞いてみる。
「ん。うちは、なんでも。まぁ遼はケーキのほうが喜びそう」
時間があったら、デートがてら少し離れた市内のケーキ屋さんへ足を延ばそうかとおもったけれど、もうそんな時間はないだろう。
「時間がないから、つつじカフェのでいい? あそこなら、近いし、おいしいから」
車で10分ほどの隣町の住宅街に、小さなケーキ屋さんがある。
どこかのパティサリーで勤めていた人が独立して一人でやっている、小さなカフェで、そこのケーキは小ぶりで、種類はそれほど多くないのだけど、丁寧で味がいい。
「うん」
すっかりトーストを食べ終わって、コーヒーを飲んでいた徹君がちらっと私を見て、ふっと笑う。あ、いじわるを言うな、と感覚で分かる。
「葵ちゃんが、朝からしようって誘うから」
甘く笑って、こっちを見ている。
「わ、わたし、誘ってないよ」
朝からなんか色っぽい触り方をしたのは徹君だ。
徹君がおもしろそうにこっちの反応を見ている。
あーぁ、いつも私はからかわれる。
コーヒーを一口飲んで、形勢逆転を狙う。
「徹君はしたくなかった?」
しっかり目を見て言ってやる。
「立てないくらいにしたくせに、したくなかったの?」
とゆっくり聞いてやる。
さすがに勝ったと思う。
徹君がカップ片手にすこし凍っている。
少しは、焦ってくれたらいい。
いつも私ばかり揶揄われる。
「葵。そういうことを言うと、出かけられなくなるから」
少し困ったようなのがうれしい。
よし、ちょっと勝った。
勝ち逃げしようと、そのままお皿を片付けて、慌ててシャワーをあびて、支度をする。
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