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ケーキ屋さんでケーキを二種類、三個ずつ買っていく。
徹君の実家は、樹君の家なわけだけど、二世帯住宅で玄関が二つある。
今日はまず徹君のお父さんのお家に挨拶するために、お父さんが住んでいるほうの玄関へ向かう。
「徹君、ちょ、ちょっと待って」
ドアの前で緊張してきた。
スカートのしわを少し伸ばして、髪を整える。
「大丈夫だから」
徹君が頬をなでてくれる。
ぎゅっと抱きしめて欲しいとおもう。
徹君の実家はすこし住宅の多いエリアにある。玄関も道路に面しているから、それもできないで、ふうぅと息を吐いた。
私の手を取ると、きゅっと握って、
「隣にいてくれたら、それでいいから」
と言う。
「ただいま」
玄関を開ける徹君に続いて、お邪魔します、と玄関に入ると、奥から、「はーい」と徹君のお父さんが顔を出した。
先日お会いした叔父さんにも少し似ているし、徹君や樹君にも似ているなと思う。当たりまえなことを考えているうちに、徹君が
「父さん、お付き合いしてる、佐藤葵さん」
とさっと紹介してくれた。
「佐藤葵です。いつも徹君にお世話になっています」
頭を下げて挨拶する。あぁ、緊張する。
スリッパをだしながら、「はい。徹の父です。どうぞ上がって」という徹君のお父さんはとても気さくな感じだ。
徹君に促されるように、キッチンダイニングに続いた和室に通されて、持って来た手土産のケーキを渡した。
「ありがとう。あとで、樹たちと頂こうかな。優香さんがお昼用意してくれるって言ってるから。一緒に」
そう言って、お茶の準備をしにキッチンへと立った。
和室にはお仏壇があった。徹君のお母さんが笑っている写真が飾られている。
「あ、徹君。お線香いい?」
「あぁ、うん」
隣に座って、お仏壇の引き出しからマッチを出してくれた。
お線香をあげて、手を合わせる。
お邪魔しています。佐藤葵です。
徹君とお付き合いさせていただいています。
不束者ですけど、徹君が大好きなので、結婚させてください。
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