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徹くんは、私に自由にしているように言って、タブレットと光の出る測定器を片手に、家中のあちこちを写真に撮ったり、測ったりしていた。
さっきお茶を片付けたばかりだけど、夕食の準備に取り掛かる。
お礼に何か食べて行ってくれたら良いし、無理なら私の夕食になるだけ。
昨日実家でもらったタラの芽と、今朝スーパーで買った小アジを揚げる用意をする。
ご飯をいつもよりも少し多めに炊いて、かんたんなお味噌汁も用意をする。
春キャベツも買ったから、ツナとあえてサラダに。
コゴミといわれる山菜も母がくれたので、塩茹でし、付け合せにマヨネーズとふき味噌を合わせた。
こういう地元の春のものを味わうのは久しぶりで、こういうことのために帰ってきたのだ思う。
(もちろん、他の理由もあるけど。)
子供の頃、春休みに畑を歩き回って、ふきのとうを探した事を思い出す。
土になっている物を収穫するっていうのは、ものすごく幸福感がある行為だと思う。
タラの芽の天ぷらをあげていると、「わ、いい匂い!」とトオル君が台所へ入ってきた。
「良かったら、食べて行って。今日のお礼に」
「お礼なんか良いですけど、迷惑じゃなかったら、御馳走になります」
「はい。簡単なものだけですけど」
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