挨拶

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「んじゃ、葵ちゃん、いらっしゃい」 樹君が乾杯の挨拶をする。 「徹、ちゃんと樹達に報告したのか?」とお義父さんがせかす。 椅子に軽く座りなおすと、徹君は私をちらっとみてから、樹君たちに向かって、「葵と結婚することにしました」と言った。 お義父さんに言った時よりも照れてる気がする。 優香さんがすぐにパチパチと拍手をして、「おめでとうー!」と言ってくれ、樹君が「まじで?葵ちゃん、義妹になるのか。そうかぁ」と笑っている。 ぎゃ。 義妹か。 優香さんがお義姉さんになるのはなんの抵抗もないけど、樹君が「お義兄さん」は、ちょっとこそばゆい。 15歳の時、友だち以上になりたくてなれなかった人が、15年後の今、義理の家族になる。 世の中、不思議なことがあるものだなぁと思う。 「そうだね。ちょっと不思議。よろしくお願いします」 二人に頭を下げた。 「あぁ、そうかぁ。なに、あのデザインが決め手?」 樹君が揶揄うように笑っている。 「ロマンチックだもんねぇ」 優香さんはニコニコしまくっている。 嫁のロマンチック発言に樹君がちらっと優香さんを気にした。俺だって、ロマンチックだとでも言いたいのだろうか。 「あれは俺も驚いた。まぁ、男はあれくらいの気合を人生に一回は見せたほうがいいってことだろう」 お義父さんまで笑っている。 「そうだよ。その気合が通じたんだから、いいだろ」 いじられた徹君がぶっきらぼうに答えている。 「あのデザイン、とても素敵でした。うちの両親もすごく感激して、喜んでいました」と徹君のフォローをする。 でも、本当のことだ。 母は確実に徹君にメロメロだった。。。 「そうだよね。自分の名前がデザインの名前になるなんて、おしゃれだよー。徹君、葵さんのご両親に結婚の挨拶するの、緊張したでしょ?」と優香さんが色々聞いてくる。 遼君がパタパタと走り回り、優香さんがお食事を勧めてくれて、色々と話をしてくれるので、とても賑やかで、楽しい時間が過ぎた。 買ってきたケーキをみんなでいただいて、夕方前に失礼した。
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