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徹君をアパートまで送る。
「ちょっと上がって」と言われて部屋に上がると、すぐにぎゅーっと抱きしめてくれた。
僅かに残っていた緊張も、不安も、すべてなくなる。
徹君の腕の中は、いつも別空間だとおもう。ここに居れば、どんな時も大丈夫だと思う。
「お疲れ様」
徹君が優しく言う。
「今日は、楽しかった。初めは緊張したけど、みんな優しいし、楽しかったよ」と言うと、徹君の顔がほころんだ。
「よかった」
「あ、徹君、この間、うちのお父さんになんて言われたの?急に結納とかいうから、びっくりした」
「あー、それは、いいじゃん。男同士の話だし。結納は葵にいうと、気使って、やらなくていいっていうでしょ?男側からやるものだし、それはお父さんもしたいそうだし、俺もやりたいと思っているから。親父もやらせてくれって、言ったでしょ?」
「んー。面倒じゃない? 顔合わせだけでいいのかなって思ってた」
「面倒じゃない。一生に一度だし。葵は、かわいい格好で座っていてくれればいい。・・・あ、ご実家にお邪魔することになるから、またお義母さんにはお手数かけるけど。結納だけお邪魔して、食事は外にしてもいいし」
「それは、良いと思う。皆さんで来てくれたら、喜ぶよ。仕出しとればいいし」
だんだんと、急にいろんなことが決まっていく。
急に決まっていくことに、他の人が言うような、怖さもない。
ピースがちゃくちゃくと嵌っていくだけ。
時々、夢じゃないかと思うと、それだけが怖い。
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