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「葵?」
葵の顔を見ると、ふわっと笑っている。
「あ、徹君、ファイル? ありがとう。ごめんね、朝早くから」
俺だけ一人、なにか、おかしいですか。
この状況の説明は?
葵はファイルを俺の手から受け取ると、もう既に居間に引っ込もうとしている『大ちゃん』に、
「大ちゃん、早くズボンはいてよ!」
と、可愛い声をかけている。
俺だったら、「徹、早くズボンはいてよ!」なんて葵に優しく言われたら、かわいくって困らせたくって、一生パンイチで過ごす。
「葵」
と、もう一度声をかける。
声が震えていたら、情けないけど、どうしようもない。
「だれ、あれ?」
「あれ? メッセージしたよね? 昨日?」
何のことだかわからない。
携帯を取り出して、葵が、「あ、送信エラーしてた。ごめん」とか言っている。
「大ちゃんが急にきて、泊まっていくことになったの。今日、紹介しようと思ってた。徹君、今晩、空いている?」
「だから、葵。誰?」
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