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その後も徹君は家の外から屋根の写真を撮ったり、十分すぎるくらいしっかりと家を見てくれた。
その間に少し早い夕食の準備ができたので、ノンアルビールで乾杯した。
「車じゃなかったら、お酒出したのに、ごめんね」
「いや、明日仕事ですし、これで全然良いです」
美味しそうにぐっとグラスを半分開けた。
「えっと、屋根は古いけど、しばらく大丈夫そうです。裏の雨樋が一部駄目になっているのは変えたほうがいいですけど」
そうか、雨とい、変えないとか。
「キッチン、お風呂は水回りなんで業者にやらせたほうがいいと思いますけど、どうします? 結構かかるかもですけど」
「んー、お風呂はそのうちきれいにしたいなぁ。トイレ自体は新しいから、壁だけちょっといじりたい。……キッチンは良くしたいけど、ちょっとこだわりたいから、今は無理かな。もうちょっと住んで、考えたい。……でもカウンタースペースがなさすぎるから、テーブルみたいな台が欲しいかなぁ。それならできそうじゃない⁇」
天ぷらとビール片手に、あれこれ家の話をするのを、徹君はちゃんと聞いてくれている。
家を買って、一人で計画しているのも愉しかったけど、不安もいっぱいだった。
友達にこうしてアレコレ話を出来るだけでも嬉しいのに、建築に知識のある徹君だからの安心感がある。
徹君は「それなら、中古材でもいいかもな」とかアイデアをだしつつ、「これ、美味しいですね」と料理へのコメントも忘れない。
誰かと一緒の食事は癖になりそうだった。
ご飯のあと、洗い物を申し出てくれた徹君を「今日のアドバイスのお礼だから」と丁重にお断りして、玄関で送り出した。
「俺は新築の設計が多くって、修繕とかリフォームはまだまだ経験が浅いから、今度、もうちょっと分かる人、連れて来ます」
「ありがとう。徹君のアドバイスだけでも心強いです。ご飯も付き合ってくれて、ありがとう」
「いや、こちらこそ。美味しかったです。じゃ、また連絡します」
バイバイして、一人になって、ほっと気楽さを味わいながら、シーンとした家がちょっとさみしく感じる。
その空間をかき消すようにテレビをつけて、音だけなんとなく聞きながら洗い物をした。
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