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ん?という顔をして、「お兄ちゃん」とあっさり言った。
あぁあ。。。
「おにいさん?」
さっきからスピードを上げっぱなしの心臓がようやくちゃんと酸素を送り始める。
「あれ、言ってなかったけ? 大ちゃんって言うの。ごめんね、寝起き悪い人で」
葵はこっちの気など知らずに、にっこりして、
「徹くん。コーヒー飲んでく時間ある?」
キッチンを指さして少し首をかしげている。
「あぁ。うん。頂く」
と返事して玄関を上がった。
まだ妙な緊張感が残っていて、このまま仕事にいったら、一日引きずりそうだ。
「あ、徹君! 大ちゃんに徹君のスウェット貸してもいい? スーツで来てたから。実家には服あるから、今だけ」
「ん。全然良いよ」
それは全然、全然いい。
お兄さんに、ちょっときつく誰だか聞いちゃったな、俺。
もうちょっと俺が血の気が多い奴だったら、玄関に引きずり下ろしていたかもしれない。
本気で焦った。
まだ心拍数は平常以上だ。
背中に嫌な汗をかいた。
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