外車の男と真珠の女

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玄関まで送ってくれた葵が、 「大ちゃん、普段はもうちょい愛想は良いから。後で説明します」 と小声で言う。 フォローしているらしい。 「ん、大丈夫。じゃ、後で」 葵は「うん」にっこりすると、お兄さんがいるキッチンをちょっと振り返って、ぎゅーっと俺を抱きしめる。 「バイバイ」 いたずらをする子のように笑って、小さく手を振ってくれる。 夜、ゆっくり話せば打ち解けられるだろうか。 前にお兄さんは中学校の時、生徒会長をしていて、今は県内の有名企業で働いていると言っていたから、なんとなく、勝手に自分の学年の生徒会長の雰囲気を予想していた。 勉強ができて、真面目なタイプ。 ハズレてた。 あの人、たぶん、田口先輩に近いタイプだと思う。 気に入られたら良いけど、敵にしたら最悪。 可愛い妹の婚約者を見に来たんだろう。 殴らなくてよかった。
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