外車の男と真珠の女

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*** 大ちゃんは昨日の夜、ふらっとやって来た。 実家に顔を出だしたついでに寄ったらしいのだけど、来るなり、「泊まってく」と言って、ビールを飲んでいる。 私より5つ年上の兄は、県内唯一の有名企業で働いているエリートだ。 東京支部と行ったり来たりで、最近は週の半分は東京にいるらしく、今日も東京から直接来たという。 派手な外車に乗ってて、びっくりする。 でも、大ちゃんらしい。 自由で、派手で、豪快。 東京ナンバーなのは向こうの貸車庫で登録しているかららしい。 なんでか聞いたら、「六本木をココのナンバープレートで走れるか?」というのが返事だった。 大ちゃんは、中学生の時は生徒会長をやったり、高校の時はラグビー部の部長だった。勉強は有名大学に行くぐらいできたし、私と違ってスポーツもできる。根っからのリーダータイプだと思う。 5つ離れているから、私が中2の時にはすでに東京の大学へ行ってしまった。だから、ブラコンでもないし、シスコンではないのに、私の結婚話に先ほどからケチをつけている。 多分、これは、大ちゃん本人のこじらせた恋愛観のせいだろう。 大ちゃんは、幼馴染の美和ちゃんが出戻ってくるのを待っているくらい、こじらせている。 待っている、といっても、しょっちゅう新しい彼女がいたり、女の人と遊んでいる風だから、真摯に待っているわけでもないんだけども。 いつか美和ちゃんの旦那さんか、女の人に、訴えられるか、刺されるんじゃないか?というような人だ。 「なぁ、付き合って、半年やそこらで、結婚する奴がどこにいる?」 ビール片手に、説教じみたことを言われている。 ここにいます。 それは、大ちゃんが美和ちゃんに言いたかった言葉ではないでしょうか・・・。
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