五月

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塾の仕事にも慣れてきてはいるものの、逆に自分のいたらない所にも気がついて落ち込む日も多い。 自信を持って仕事をするという境地に至るまでには何年かかるのだろうか。 東京での仕事は旅行会社の倒産とここへの引っ越しで二つに区切りを打ったわけだけど、今の英語講師と翻訳の仕事は、自分の将来のために続けていきたい。 私が塾に来る学生達くらいの頃は、普通の仕事ではなく、なにか特別な仕事をしたいと思っていたけれど、社会に出て、なにか一つ生業を持つということの難しさ、立派さに気がついた。 父のような小さな市町村の役場職員にしろ、学校の先生にしろ、大工さんや美容師さんにしても、ちゃんと家族を養える職を持った人はすごい。 家族を養う、とまではいかないから、自分の家を持って、自分の好きな仕事をして生きていけたら幸せだと思う。 まずはそこから。 恋愛に興味がないわけじゃなくって、いつか素敵な恋愛ができたら良いと思うけど、元々モテるほうじゃないし、合コンとかは苦手だし、頑張り方もわからなくって、どうしようもない。 東京の友人に家を買うと言ったら、結婚と家の順番が逆! 頑張り方を間違えている! と言われたけど、私が確実に出来ることから手をつけたらこうなったのだ。 恋に落ちることは計画できないし、その相手が自分を好きになってくれるという確証もない。 だけど、自分の頑張り次第で貯金は出来るし、ローンも組める。 そして、私は自分にできる仕事をして、生活をする、それだけのことに自分の小さなプライドをかけている。
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