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徹君は、いつも私が行く近くのホームセンターとは違って、ちょっと遠くのもっと大きなホームセンターに連れて行ってくれた。
建築資材の量が断然おおいし、他のインテリア、ペット用品も多い。
「ここのほうが、専門的な物は多い気がするんで、他になかったら一度ここに来ると良いですよ」
さっき駐車スペースに入りながら、そう説明してくれた。
車から降りる時も、そんな大型トラックでもないのに、「大丈夫?」と子供のようにからかわれた。
からかいながらも、念の為すぐそばに立ってくれるし、何より笑う時の目がやばい。年下ハンサム、恐るべし。
でも確かに、今日みたいにヒールを履いていないと私と徹君の背の高さの違いは大人と子供くらいあった。
徹君はやさしい。
その親切心を変に勘違いしないと車内では硬く心に決めたつもりが、駐車場から店内へ徹君の後をついて歩きながら、楽しかったら今日だけ楽しんで良いじゃないか?と思い始めた。
素敵な男友達と買い物する。
楽しもう。
奥の資材コーナーにいくつも網戸が立て掛けてあった。
「んー、佐藤さんちの網戸はこのタイプ。これとこれ」といくつか並ぶ網戸から、うちの窓枠に合うタイプを教えてくれる。
予算重視!と一番手頃なのを選ぶと、徹君が店員さんに声をかけて、必要な分のサイズがあるか確認してくれる。
大きめな商品なので、タグだけもらって会計すると、後で資材置き場の裏口から車に積み込んでくれるシステムらしい。
店員さんにタグをもらい、会計をさがして店内を見渡すと本当に色々置いてある店だと分かる。
ペット用品エリアには、熱帯魚水槽が置かれている。
「徹君、時間、大丈夫だったら、ちょっとあっち見てもいい?」
熱帯魚とか、置いてある店は絶対見ちゃう。
「良いですよ。一日空いてるんで。トラックだし、必要なものがあったら、運ぶのにちょうど良いですよ」と優しい。
「うん。お魚見たいだけ」
大型店だけあって、熱帯魚だけじゃなくて、水槽を綺麗に保つとかいう、エビや貝類までいた。水草の種類も多い。
「すごいね。水族館みたいな」というと、「ははは、水族館ではない!」と笑われた。
「メダカがさ、そのうち飼いたいんだよね。古い鉢とかで、玄関か、縁側の方に置きたいの」
私がメダカの水槽を見つけて説明する。
「楽しそうですね。」
「うん、金魚でもいいけど。」と金魚の水槽も覗く。
水の生き物は、何てきれいなんだろうと思う。
動物は虫以外なんでも好きだけど、ぼけーっと見ていられるのはスイスイ水を泳ぐ、小さな魚達だ。
順番に水槽を見て、子供の頃からの癖で、「飼うんだったら、これとこれ」を想像し始める。
華やかな魚もいるけど、結局熱帯魚ならグッピーかネオンテトラに絞られる。置けるサイズで考えたら、10匹いけるかな?本当は30匹位群れにしたいけど。
「徹君は飼うんだったら、何が飼いたい?」
「クラゲ」
それもいいけど。
「ここに置いてあるやつで」
「そういうルール?」
「そう、そういうルール。今、飼うとしたらどれ?」
「じゃ、一人暮らしなんで、小さいヤツ」とグッピーの水槽を指差す。
「私も。私、いつも結局グッピーかネオンテトラになっちゃうんだよなー」
「いつもって、いつもこの想像してるんですか?」
ククっと笑われて、はしゃぎすぎたことに気がついた。
急に恥ずかしくなって「海老もいるねぇ〜」とくるっと徹君に背を向けたのに、まだ背後で徹君がハハハと笑っている。
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