DIYストア

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「ご無沙汰しております」と軽く徹君が頭を下げる。 「お元気ですか?」 徹君が挨拶すると、女性はメニューを掴みながら、「おかげさまで! どうぞ、こちらへ」と挨拶を返しながら窓際の席へ案内してくれた。 メニューとお水を出して、話の続きをしたそうだったけど、ちょうど隣りのお客さんが会計に立ち上がったので、「じゃ、ごゆっくり」とだけ言って、カウンターの方へ戻っていった。 「この店、俺が今の会社に移って、すぐに担当したんです」 道理で、徹君の挨拶とか、ちょっとお仕事モードっぽかったのか、と納得がいく。 店内も黒い木材と白壁とシンプルで、あちこちに緑が映え、落ち着いた雰囲気だった。 「素敵だね」 そのままの感想を言った。 私達が座った席も庭が見える大きな窓際の二人がけの席で、日ざしが心地よい。小さいお店なのに、奥には冬用のストーブを囲むようなソファー席もある。微妙な和洋折衷具合が田舎に合っていて、いい趣味だなぁ、と思う。 店内を見渡して、徹君に改めて「すごく素敵だよ」と言ったら、「オーナーさんの希望に添えるように頑張ったんで」と少し照れたように笑った。 しばらくして先程の女性が戻ってきて、私は桃のタルトとアイスコーヒーをお願いして、徹君はチーズケーキとアイスコーヒーのセットを注文した。 注文を待つ間、他愛もない話をするだけなのに、二人がけの席は少し距離が近いからか、妙に緊張して、窓の外に視線を逃した。 デートみたい、と数回、心のなかで思った。 で、数回目に、ポロッと言っちゃった。 「オシャレなカフェで、デートみたいで、楽しいね」 徹君はちょっとびっくりしたようだったので、自分が変な事言っちゃったのに気がついて、焦ってなにか言おうと思ったら、徹君は優しく笑った。 「そうですね。じゃ、そういう事にしておいて下さい」 「え?」 「さっきのオーナーさん、いつも会うたびに、誰か紹介するって言ってくるんで」 そういう事ですか。。。 なんか勘違いしそうになったよ。 「はは。そうなんだ。じゃ、オーナーさんにはデートってことで」 そんなことなんでもないっていう風に返事をしたけど、なんだかソワソワする。 男友達や同級生と食事や映画に出かけることも、まぁまぁあったのに、今日は落ち着かない。 しばらくぶりだからなのか、妙に浮足だっている。
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