再会

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樹君は、徹君と並ぶとほんの少し徹君の方が背が高い位で、短い髪の毛は高校の頃から変わってなかった。 カジュアルな服装なのに、以前にも増してなんとなくオシャレな雰囲気が出てる。 中学校の頃の樹君のまとう、この空気感が好きだった。 目立つ事をするわけでもないのに、かっこ良かった。 「徹から葵ちゃんがこっち戻ってるって聞いて、びっくりした」 しっかり私の目を見て微笑む。 「うん。こっち、好きだし。こっちで落ち着こうと思って」 樹君は私の家に目をやって、「思い切ったね」と言った。 「うん。今年、30になったし、気合いで」 はは、気合かぁ、と笑う樹君に「樹君、結婚したんだよね。おめでとう」とすかさず、なるべく自然に、伝えた。 私の昔の片思いを知っている徹君の視線が刺さる。 でもちゃんと伝えたかった。 樹君は、あの頃、私がどんな気持ちを持っていたか知らないだろうけど、私にはとても大切な人だ。 「あ? あぁ。3年前。もう子供が一人いるよ」 「かわいいだろうね」 樹君も徹君も小学校の時は、おさるみたいで、目がクリっとしてて、かわいい男の子だった。 「んー、自分の子供だしね。かわいいわ」と少し照れた。 「葵ちゃんは? 結婚とか、彼氏は?」 「ん?」 なんだかものすごく恥ずかしい。 「いや、全然〜」と手を振って、妙な恥ずかしさを誤魔化す。 大好きだった人に、枯れてるとも思われたくないし、まして最近は弟くんのハンサムぶりに勝手に癒やされているとも言えるわけがない。 樹君はちらっと徹君を伺うと、「そうなんだ。もったいない」とお世辞を言ってくれた。 私達の同級会のような会話に痺れを切らした徹君が「兄貴、これ、下ろすよ」とトラックから網戸を下ろして運び出す。
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