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樹君は、バスルームのパンフレットをたくさん置いていってくれ、また見積もりができ次第メールをしてくれると言って、トラックを運転して帰っていった。
徹君も帰ると言って、車まで来たのに、車のドアは開けずに、車に寄りかかって腕を組んでこっちを見た。
「どうでした?」
「え、良かったよー。色々、勉強になりました。見積もりができたら参考にするし」と答えると、じっと見返された。
「兄貴に会って、どうでした?」
ちょっと真剣な感じで、怒っているのか? とも思う。
まだ私に樹君への気持ちがあって、樹君の幸せを壊すような行動に出るとか心配しているのだろうか。
「徹君が、樹くん連れて来るって言わないから、初め、びっくりしたけど、大丈夫だよ。……びっくりしたし、懐かしかったけど、それだけ」
本当に。
樹くんとどうしたい、とかは全くない。
お嫁さんに意地悪とか、しないし。
「そうですか。じゃ、良いけど」
今日、3人で楽しかったのに、もしかして、なんか疑われてたのかな?と思うと少しイラっとした。
「なにそれ。なんか疑ってた?」
「疑うとかじゃないですよ。ただ気になっただけで」
よく分からない返事だ。
と思ったら、突然、徹君が私の頬に手を伸ばした。
え?
さっと頬を徹君の指が掠め、「髪、口に入る」と、私の髪を耳にかけてくれた。
っえー!
徹君がかすかに触った肌がかっと熱くなる。
動揺しちゃって、どうしようもなく恥ずかしい。
「あ、ありがとう」と、どうにか答えると「ん、じゃ、また連絡します」と徹君は車に乗り込み、軽く手を振って帰って行った。
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