川遊び

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かなりしっかりBBQを頂いたので、準備を手伝わなかった代わりに、と片付けを申し出た。 「じゃ、俺も準備してないから、片付けで」と田口君もお手伝いをかって出てくれる。 鉄板の片付けは冷えてからにして、そのままにして、まずゴミをまとめて片付ける。家に持ち帰ってしっかり洗うというので、車を汚さないように鉄板を新聞紙に包んで、BBQの荷物をまとめた。後は帰りにそれぞれが持ち帰るのみ。 田口君やレイコさんとおしゃべりしながら片付けが楽しく終わったころ、日野さんたちがコンビニからアイスを買って戻ってきた。 「デザートですー」 「どれが良いですか?」 色んな種類を買って来てくれたらしく、早いものがち。 橘さんの袋から、大好きな抹茶アイスを頂く。 木元君と一緒に徹君も山下君と釣りに参加していたが、向こうで日野さんにアイスによばれている。橘さんも私達にアイスを配ると、日野さん達に合流した。 男の子3人に女の子が二人、キャッキャしている様子は、ちょっと合コンみたい。 その雰囲気を見て、嫌味っぽく、そう思ってしまった。 まるで私の心を読んだみたいにぼそっと、 「若いなぁー」 と田口君があっちのグループを見てつぶやく。 「お前、こっちが年寄りグループみたいに言うな。俺はまだ若いからな!」 と一番年上の川西さんが冗談交じりに言い返した。 「それを言うなら、俺まだ二十代ですけど!」 と田口君が言い返す。 「王子はねー、やっていることがおじさんっぽいよ」 レイコさんがあだ名でからかった。 王子というのはすらっとハンサムな田口くんのあだ名らしい。確かにさっき、田口君は川西さんに投資とか競馬とか、大人というかおじさんぽい会話をしていた。 ちらりとあっちを見ると、日野さんがアイス片手に釣りに戻った徹君の横に立って、話しかけている。 あの子、徹君が好きなのかも。 だいたい雰囲気で、狙っているんだろうな、というのは分かる。 はじめちょっとギクシャクしたのもそのせいだろう。 誰だって好きな人がグループの集まりに女の人を連れてきたら気に入らない。 ああいうのは若々しくって、かわいいな。 うん、かわいい。 言い聞かせるように頭の中で唱えたけど、ちょっと心がざわついていた。 徹君は親切で、色々優しくしてくれたから、私はちょっと特別仲がいい女友だちのような気分になってた。 本当はまだなんにも知らないのに。 あの子みたいに前から徹君を好きな女の子もいるし、徹君が好きな女の子もいるのかもしれない。 何故か急に自分が場違いなところにいる気がして、怖くなった。 アイスクリームを食べ終わると、徹君達が釣りを諦めたのか、おしゃべりしながらこっちへ向かうのが見える。 木元君が橘さんにちょっかいを出しているように見える。あそこは同僚らしいけど、良い感じだとおもう。 日野さんは徹君の隣をキープしてニコニコしている。 逃げるように立ち上がって、アイスの箱をゴミ袋につめると、川の真ん中を横切る飛び石を渡った。 途中、少し距離のある飛び石があって、ふらつく。 落ちても浅いのだけど、なんとか落ちずに向こう岸へ。 川辺にすとんと腰を下ろすと、知らないうちに同じように飛び石を渡ってきたらしい田口君が隣に座り込んだ。
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