風邪

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適当に風邪の時に食べたくなるかもしれないものをいくつか買って、そのまま葵さんの家へ向かう。 この辺の田舎の家宜しく、葵さんは昼間、玄関の鍵をかけてない。 普段この辺の人が皆んなするように、玄関を開けて、「こんにちは〜」と声をかけたが、返事がない。 「葵さん? 薬、持ってきました」 しばらくしても返事がないので、「すみません、上がります!」と、声をかけつつ、上がり込む。 倒れたりしてないといい。 キッチンや居間にも姿がないので、二階に声をかけつつ、上がる。 階段すぐの部屋を開けたら、葵さんが寝ていた。 そのまま一旦キッチンへ戻り、薬用の水を入れて持っていく。 もう一度声をかけてドアを開けると、葵さんが目を開けた。 片桐さんが薬を持ってくると思っていたようで、俺がかわりに薬を持ってきてびっくりさせてしまったようだ。 急に起き上がろうとする。 ふらついたので、随分具合が悪そうだ。そのまま一旦、寝てもらって事情を説明した。 半袖のパジャマで寝ていた葵さんは、髪に寝癖がついて、風邪のせいか、視線も動きもぼうっとしている。 あまりに無防備に見えて、急に、勝手にあがった事を少し後悔した。 とにかくなにか食べてもらって薬を飲ませればいいと思い、買ってきたヨーグルトやプリンを薦めると、プリンを食べるという。 プリンを渡してしばらく、動きがない。 プリンを片手に、動きがナマケモノよりスローモーションだ。ぼーっとプリンを見つめている。 寝て、こぼしてしまうのではないか? と思って、一旦プリンを預かって、スプーンで口へ運ぶとパクリと食べた。 子供のようで、可愛らしい。 数回そのまま食べ、段々とスピードが落ちて、疲れた様子なのが伝わる。 「もういいの?」と確認すると「もういい」と首をたてに振る。 弱った小動物感、ハンパない。 薬を飲まそうと、水の入ったグラスを渡すと、両手でこぼさないように集中している。取り出した錠剤を渡そうにも、彼女の両手はしっかりとグラスを握ったままだ。 プリンにも口を開けたので、そのまま口元へ錠剤を近づけたらアーンと口を開けたので、放り込む。 指先が熱を持った唇に少し触れた。 ゴクリと水を飲むと、グラスを俺に押し返して、パタリと布団に倒れ込んでしまった。
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