4824人が本棚に入れています
本棚に追加
なんだか話を変えようとしたのに、ドツボにはまった感じ。もう忘れて欲しい。
「ハハハ、可愛かったですよ」
えっ、と思わず顔を見上げる。
薄暗い駐車場でも私が赤くなったのがバレたかもしれない。
形勢逆転を狙って「ははは、トオルくん、酔ってるねー」と余裕のある振りをしていなした。
トオルくんは、ハハ、と笑って、ちらっと居酒屋を振り返り、先程のグループがもう解散したのを確認し、私に向き直ると、「酔ってますよ」と一歩、私に近づいた。
「あの時は酔ってなかったですけど」
そういうと、手を伸ばして、風で顔にかかった私の髪をさっと耳にかけてくれた。
蛇に睨まれたカエルのように固まる。
ちょうど、ピコン! と、ポケットに入れた携帯にメッセージが来て我に返る。
慌てて取り出すと、父から「もうつきましたか?」という確認だった。
「お父さん」
徹君に説明すると、「呼んでこようか?」とスナックを指差して聞いてくれた。
「大丈夫。メッセージしたら出てくると思う」
と、言いながら、『今、駐車場。』と父に返信する。
「徹君は?乗ってく?」
「いや、歩きたい気分なんで」
と言うと、じゃ、と去っていった。
徹君が角を曲がって見えなくなって、ふっと息を吐く。
運転席に戻って、今さっきの出来事を反芻していたら父がスナックから出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!