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 地元の小さいものとはいえ、せっかく日本の夏祭りを体験するんなら、とアンドリューに浴衣を提案したらかなり乗り気だった。 まぁ、一回着るだけなので、知り合いに借りてもいいだけど、アンドリューは日本の思い出に欲しいというので週末に買い物にいった。 私もずいぶん前に作ったものが実家のタンスに眠っているけれど、これを機にあたらしいのを買おうかしら、と張り切る。 いや、貯金も少ないし、小物だけ買い足そうか。 アンドリューのために、と提案したのに、自分のほうがはしゃいでいる気がする。 週末の前に実家によって、浴衣を引っ張り出していると、母が母の浴衣も出してくれた。赤い花の華やかな自分の浴衣と、藍色の絞りの母の浴衣を写真に撮って、お店で決めることにする。 土曜日に、私が車をだして、買い物へいく。 男性の浴衣を選ぶのは初めてだけど、渋い柄の浴衣も着る子がかっこよければ、選んでいて楽しい。 店員さんも同じ気持ちなのか、色々勧められて、肩にかければ、かなり様になっている。 結局、濃いグレーに薄く黒の縞が織り込んである生地に、紺色の帯を合わせる。 私も無駄遣いはしないって決めていたのに、店員さんに勧められて、沢山みてしまった。 本当に最近の浴衣はかわいい。 あれこれ悩んで、アンドリューがあきれるほど見たのに、結局、母の絞りの浴衣を着る事にして、最近の帯飾りだけ新調した。 『アオイ、これ、自分で着れるの?』とアンドリューが心配する。 『うん。私は着れるし、アンドリューのも着せてあげる』 文化祭などで着ることがあって、浴衣なら自分で帯までできる。 男帯はやった事がないけれど、ネット動画で練習すれば何とかなるだろう。 『よし、すごく楽しみ』と張り切っているので、『小さいお祭りだからね』と念を押したけど、私もかなりワクワクしてきた。
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