夏祭り

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花火が終わるとぞろぞろと皆、帰路につく。 アンドリューのアパートの駐車場に車を停めたので、そこまで一緒に帰ろうと、二人で歩きだす。 「葵さん!」と後ろから声をかけられて振り向くと徹君が小走りにやってきた。 「帰るの?」 「うん」 頷くと、歩いて?と聞かれる。 「車だけど、アンドリューのとこに車、停めたから」 「あぁ。ちょっと待って。乗っけて下さい」 「うん。いいよ」 青年団の打ち上げとか、いいんだろうかと思っているうちに、徹君は一旦、来た方に戻って、樹君らになにか言うと、青年団の法被を脱いで返して、戻ってきた。 3人で暗い夜道を歩きながら、お祭りの話をする。 中学校の先生も一人二人来ていたそうだけど、どなたか気がつかなかった、とか、宅配便のゆうちゃんに会ったとか。 ゆうちゃんは二番目の子を肩車して、いいお父さんしていた。アンドリューもネットショッピングとかの配達でお世話になるかもだし、紹介をした。 車を停めたアンドリューのアパートにはすぐについた。 アパートの駐車場は町営の駐車場と併設していて、お祭りのため、他にもここに停めた人がいたようだ。 駐車場の入口でアンドリューに、浴衣をハンガーに掛けて置いて、明日にでもたたむように説明して、お休みを言うと『今日は、ありがとう』とハグをされた。 『どういたしまして。楽しかったね。』 ハグに応えてたら、耳元で小さい声で、「go and get him(さっさと捕まえて), darling(おいでよ)」と言われた。 私が焦っていると、ハグを解いてくすっと笑っている。 ハイハイ、とトオルくんに悟られないように、追い返すようにアパートへ送り出す。 「バイバイ、トオル!」と軽く手を振って帰って行く。 ちらっと振り返ると軽く片手を上げて、バイバイに返事したようだった。 あぁ、誂われて、耳に変な圧力かかったじゃん。そんな仕掛けるような、強気で行けたら、苦労しない。 やましいイメージを耳から払うように耳を触って、トオルくんに向き直る。 トオルくんが「何、アレ?」と手をポケットに突っ込んで、少し不機嫌そうに聞いてくる。
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