縁側の月

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心臓が飛び出しそう。 縁側に座ったまま、徹君を見上げると、そっと私の頬にかかった髪の毛を耳にかけてくれた。 酔いだけじゃなく、くらくらする。 思わず私の顔を離れる徹君の手をつかんだ。 彼はふっと微笑むとそのままかがんで顔を寄せた。 そっと唇がふれる。 軽いキスに何も言えないでいると、手をぐっと引っ張られて、立ち上がらされた。 引かれるまま、徹君の腕の中に入る。 ぎゅと抱きしめられると、背の低い私は徹君の胸の位置にしか届かない。 苦しい位に胸が鳴る。 「葵さん」 呼ばれて顔をあげると、もう一度口づけられた。 優しく唇が触れ、離れたところで息をついたら、深いキスが降ってきた。 かがみ込むようにしてキスをする徹君の背中に腕を回してしがみつく。 そうしないと倒れてしまいそう。 熱に融けて、くらくらする。 つま先立ちになって応えたせいで、少しすると息苦しさと足元の覚束無さで、耐えられなくなる。キスだけなのに、息が上がって、寄りかかるしか出来なくなっている。 徹君はぐっと私を抱きしめたままクスッと笑って余裕の様子だ。 夏の月がトオルくんの肩越しに眩しい。
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