縁側の月

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浴衣っていうのは外見は色っぽいけど、正直、脱いだ後の姿は決して色っぽくないと思う。 今日は夕方早くからずっと着ていて、汗っぽいし、きっとお腹に腰紐の跡がついてたりする。その上、和装下着をするまでもないと思って普通にブラは目立たないように、プレーンなやつだ。可愛げはない。(和装下着だったら、もっと訳がわからないと思う。)パンツもしかり、とてもプレーン。 シャワーして、着替えたいのだけど、そういう事ではないのかな。 ただ浴衣だから良いとか、そういう気の迷い系だったら、どうしよう。 ん~~~。 と一人、壁に向かって悩んでいると、「なに悩んでるの?」とクスりと笑われた。 気がつけば、片付け終わった徹君が、庭から片付けてくれたらしいランプを片手に、キッチンの入口に立っている。 空いた方の手を鴨居に上げて、こっちを見ている様がカッコ良すぎる。 「え、えっと。徹くん、しゃ、シャワーする?」 「後でいいよ」 「じゃ、じゃ、私、お先に」 なんとかこの案件を持ち出した。 「浴衣、脱いじゃうの? 可愛いのに」とふざけた感じで聞いてくる。 カワイイ。。。だって。 また顔が熱くなる。 でも、浴衣を脱いだところは、そのままお見せできるものではない。。。 「うん。汗かいてるから」 なるべく焦っているのを悟られ無いように、さらりと言うと、私の緊張を見透かしているように笑って「じゃ、帯、とってあげる」と詰め寄られた。 やばい。緊張する。 「はい。そっち向いて」と、そのままクルリと身体を回されて、帯の端を引き抜かれる。 ばさっと帯のリボンが崩れた。 腰ひもなんかが見えるのはみっともない気がして、緩んだ帯が落ちないように手で押さえて振り返ると、解いた部分の帯を渡してくれる。 「あ、ありがとう」 訳もわからずお礼を言うと、トオルくんは甘くこっちを見つめている。 あんまりにハンサムに見えて、惚けて見つめていると、「シャワー行くんでしょ。行かないんなら、ここで襲うよ」と、優しい表情とはあんまりに不釣り合いな言葉を吐かれて、びっくりする。 「行きます!」 慌ててトオルくんの脇をすり抜ける。 背後で、ケラケラと笑う声がする。
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