縁側の月

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こういう時、どんな格好で出てくるのが正解なのかわからない。 結局、最近使っている薄手の半袖のパジャマという格好で出た。 「徹君、シャワーどうぞ」 「はい」とキッチンのテーブルから立ち上がると、クシャっと私の髪をいじった。 「タオル、置いておいたから。着替え、どうする? 貰い物のTシャツ、フリーサイズのがあるけど着れるかな?」 「ありがとう。着てみる」 パッケージに入ったままのTシャツを渡して、買い置きの歯ブラシも手渡した。 徹君がシャワーしている間、ビールグラスを片付け、寝室のシーツを替えた。 少し酔いが覚めて、緊張してきた。 冷蔵庫の冷酒を出すと、グラスに注いで一口煽る。 今まで彼氏がいたこともあるし、こういう事も初めてじゃないけど、好きな人との初めてはやはり緊張する。 私の恋愛経験の少なさがそうさせるのか、一旦徹君の雰囲気が変わると、徹君とどちらが年上か分からなくなる。 さっきから随分、私、情けない。 魅了されているばっかりで、徹君に遊ばれている感がある。 落ち着け、私。 グラスの冷酒を口元に運び、ゆっくりと飲み込んだ。
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