縁側の月

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「シャワー、ありがと」 振り返ると、徹君が貰い物のTシャツにさっきまで着ていたショートパンツという格好で脱衣場から出てきたところだった。 「徹君も飲む?」と冷酒を指した。 「うんん、水、下さい」 お水をグラスに入れて差し出すとぐっと一気に飲んでしまった。 男の人の喉が動く。 色っぽいと思った。 もう冷酒が効き始めている。 グラスを流しにトンと置くと、そのまま私の手を取った。 「部屋、行こ」 寝室が二階なのは知っているから、そのまま二階へと連れて行かれる。 部屋に入って、戸を閉める。 「座って良い?」 コクリと頷くと、徹君がベットに腰掛け、繋いだままの手を引っ張る。 近づいた私を足の間に立たせて、腕で囲った。 近かすぎて、逃げる場所もなく、さっきから言うことを聞かない心臓の音が聞こえてしまいそうだ。 徹君が熱っぽい目で私を見上げている。 「はは。葵さん、緊張してる?」 「し、してる」 声が上ずりそうになる。 「ハハ。俺も、かなりしてる」と笑うと、私の後ろで繋いだ両手を引いて私を抱き寄せた。 指を伸ばして、徹君の髪を指にすくう。 シャワーでまだ少し濡れていた。 徹君は顔をあげると、私の首に手を回して引き寄せて、キスをした。 かがみ込むようにして、唇を合わせる。 お腹の底が熱くなる。 苦しくなって、顔をあげると、徹君と目があった。 熱く、熔ける。 「やばい。かわいい」
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