縁側の月

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ぎゅっと抱きしめられたと思ったら、膝の上に横抱きされている。 ちょっとバランスが悪くって、抱きつくようにしがみつく。 耳に口元を寄せられて、息がかかる。 「葵って呼んでいい?」 耳元で囁くように言われて、くすぐったような痺れが耳から身体の中心に走る。 「うん」 首を縦に振った。 そのまま耳にキスされた。 「っあ」 もう変な声出た。 恥ずかしくって、徹君の肩に顔を埋めた。 「葵」 なだめるように頭を撫でて、ゆっくりボタンを外される。自分のものにしてみたいと思っていた手が私の衣服を剥がしていくのをじっと見ていた。 それだけで目眩がしそうだった。 どうしてこの人は、こんなに色っぽいのか。 ボタンを外したパジャマの襟をずらして、肩に口づけられて、パジャマが落ちる。 上半身が下着だけになって、恥ずかしさで徹君に抱きつくようにくっついた。 ぐっと抱きしめてくれる腕が温かい。 髪の毛を掬ってよけると、首筋にいくつもキスを落としてくれる。 「すげー、かわいい。」 首筋に呟やかれて、震える。 顔をおこすと、しっかりと目があった。 あんまりに真剣な目でしっかりと見つめられて、困ったら、ふっと笑ってキスしてくれた。 「葵、ちょっと立って」と言われて、パジャマのズボンを脱がされるのだろうと思って首に手をかけたまま立ち上がると、いたずらするように笑って、胸元にキスされた。 腰を抱いて、指先でブラのラインをなぞる。 同時に腰に回した手がゆっくりとウエストをなぞって、鼓動が早くなる。 艶っぽい目で見上げられて、たまらなくなる。 トオルくんの指先はウエストをゆるりゆるりとなぞっているだけだ。 じれったい。 いつから私はこんなにはしたない思いを抱くようになったのか。 「ト、トオルくん」 「ん?呼び捨てでいいよ」 ウエストをなぞる手はゆっくりとそのままに、優しく見上げてくれる。 「……トオル」 慣れない呼び方は呼んでみたものの、少し恥ずかしさがある。 「なに?」 「パジャマ」 脱がさないの?とはさすがに聞けない。 「ん?」 私に聞き返しながらも、ゆっくりとパジャマのウエストギリギリのラインをなで続けている。誂うように私の目を見つめているから、どうも意地悪されているらしい。 自分で脱いだらいいのか? 「意地悪」 もう脱がして欲しいなんて思っている自分の恥ずかしさに、思わず顔を覆う。
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