少女たちの素敵な花園

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「あとね。私たちの大学ってさ,十数年前まで農学部で学生が動物実験やってたんだって。知ってた? 一部の学生たちが実験動物を遊び感覚で殺してたことが問題になってもう動物実験はやらなくなったんだけど,そのとき使っていた機材とか薬品がさ,倉庫みたいなこの古い建物に全部残っててね。ここを建て替えるまで置いておくってなってたみたいなんだけど,その時の担当者はもういなくてね。だからこうやって私が自由に使えるの。いちおう,私,薬学部だし,人より薬の知識はあると思うんだ。あ,基礎の基礎だけね」  そう言いながらゆっくりと影が私の顔を覗き込んできた。目の前で逆さに見える顔に見覚えはなく,今どきの女の子といった感じだった。 「へへへ,明日香ちゃん。久しぶり」 『ダ……ダ……レェェ……?』 「ああ……やっぱ,わからないかぁ……」  まったく見覚えのない女の子が楽しそうに笑いながら,ゆっくりと私の横に移動した。記憶を辿ってもまったく心当たりがなく,笑顔を見てさらに混乱した。 「明日香ちゃん,美樹と結子,そして私。いまこの部屋には澤入第二小学校六年二組の仲良しグループが集まっています。明日香ちゃんは最後の参加者だから薬の投与量もバッチリだったし,こうやって会話ができるなんて本当に素敵」 『ワ……ガン……ナ……イ……』  口から涎が溢れそうになると,ボボボボボと音を立てながら口の中のボールに取り付けられたチューブが唾液を吸った。
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