少女たちの素敵な花園

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 両手首から滲み出る血が墨のように黒く変色して乾燥し,両足首の皮がめくれ赤黒い肉が露出していたが,もはや痛みを感じなくなっていた。ほんの少し前までは腹部を固定する革製のベルトが肌に喰い込み,自由の利かない股関節に激痛がはしっていたが,それすら感じなくなっていた。  焦点の合わないぼんやりした視界に入るのは,小さな穴が規則正しく並んだベージュ色の天井と,おそらく間接照明なのだろう,横から射す光の筋だけだった。  もうどれくらいこうしているのか,いまが昼なのか夜なのかすらわからないが,朦朧とする意識のなかで天井を眺めていた。耳元で蚊が飛び回るような機械音が静かに聞こえ,自分の不規則な呼吸音がやけにうるさく感じた。最後に覚えているのは,サークルの友達とカラオケに行き,終電ギリギリまで遊んでいたことだった。  目を覚ますと冷たいステンレス製の台の上に全裸で大の字に固定されていた。分厚い革製のベルトが両手首・両足首,胴体と首に巻かれ,後頭部をしっかりと台に押し付けるように固定されていて,少しでも動こうとするとベルトが肌に食い込んだ。口には息ができるように無数の小さな穴が開けられたボールのような球体を入れられたまま固定され,細いチューブが定期的にボボボボと無機質な音を立てて唾液を吸い出した。  なにが起こっているのか理解できずに,悲鳴を上げて助けを求め,自由の利かない身体を必死に動かそうとしたが無理に動けば革が皮膚に食い込み,皮膚が擦れて血が滲んだ。  それでも構わず泣き叫んだが,どんなに大声をあげても誰も現れることなく固定され続けていた。
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