第一話 学校にて

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 五時間目は国語の授業。古典。昔の人が、好きな人のことを想って詠んだ和歌を、あたしたちは、シャーペンで分解しながら、意味を学んでいく。 「この和歌。現代語訳できる人は?」  黒板に大きく書かれた五七五をコンコンとチョークで叩く、キョーコちゃん。キョーコちゃんは国語の先生。黒い髪を肩につかない長さでスパッと切りそろえた、格好いい大人のセンセイ。  黒板に書かれているのは、教科書に書かれている和歌をそっくり写したもの。コキンワカシューに出てくる有名なものらしい。  現代語訳の答えはどこにも書いていない。本当の答えは、キョーコちゃんしか知らないんだ。  教室内は静まりかえっている。授業を真剣に聞いているわけじゃない。みんな寝てたり、窓の外を見たり、教科書を壁にしてマンガを読んだり、スマホを弄ったり。あたしも例外じゃない。キョーコちゃんの話を聞きながら、前の授業で出された宿題をせっせと解いていた。 「誰もいないの? じゃあ、今日は十七日だから……」  キョーコちゃんがカレンダーを横目で確認。誰かが当てられる! 途端に、聞き耳を立てていた生徒達は慌てて教科書をぺらぺら捲る。何ページ? そんな声もボソボソ聞こえてきた。  ふう、一安心。名簿番号一桁のあたしはあてられずに済みそう。
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