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マスターは桜と自分に水を用意するとカウンターの中に小さな椅子を置き腰を下ろす。そして
「桜ちゃん賢祐くん、この前は…君たちのこと話してくれてありがとう。今から話すことは僕と家内の老婆心とか…そうだね…お節介というものだからね、聞いてくれるだけでいいんだよ」
そう言って水を口に含むと
「君たちはこれからもずっと一緒にいるんだろ?このままか…それとも夫婦になりたいと思う日が来るのか…」
俺たちを優しく見つめた。答えを求める風でもなくゆっくりと続ける。
「桜ちゃんと賢祐くんが良ければ、僕と家内は喜んで桜ちゃんを養子に迎えるよ。今すぐというのでなく…心に止めておいてくれるかい?君たちの将来に必要になったら遠慮なく言って欲しい。もちろん今のままでも僕たちは桜ちゃんを娘だと思っているよ」
思いもよらない申し出に、俺たちはとりあえず礼を言い店を出た。俺は戸籍上のことは考えた事がなかった…桜もそうだろう。ただ一緒に懸命に生きてきた、それだけだから。黙って隣を歩く桜の手を取り指を絡ませる。
「桜…今、俺はこのままでいいと思っているんだ…だがマスターの言ってくれた事は有難いね。心強いよ…俺たちが戸籍上の問題でいつか思い悩む日が来る前に考えてくれたなんて」
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