静穏

番外編 8月

　毎年8月、盆の週に喫茶店は1週間休みになる。例年墓参りに行く他は何も決めていない。旅行にも暑すぎ動くに適さないからだ。

「桜、今年は夏休みどうしたい？」
「お墓参りはもちろんでしょ？他は…暑いよね…」

　例年通りの休みになりそうだと思っていたが、それは墓参りが終わるまでだった。

　墓参りを終えた午後、疲れたと言って珍しく昼寝をした桜が2時間以上起きて来ない。今までになかった事で心配になり様子を見に行くと真っ赤な顔で呼吸を荒くしており明らかに熱がある。急いで汗だくの服を着替えさせ出来るだけ水分を摂らせると休日診療へ駆け込む。喉が真っ赤に腫れて夏風邪ですね、と言われ熱が続くかもしれないがとにかくしっかり飲んで休むようにとの事だった。薬をもらい帰り道のコンビニに車を停め、桜を車に置いたままスポーツ飲料やゼリーなど思い付く限りの物を走って買う。

　マンションへ帰り着替えた桜は、ごめん…ありがとうと言うが声を出すのが辛そうだ。

「大丈夫だ、喉痛むだろ？話さなくてもいいが水分と薬は頑張って飲み込んで」

　頷く桜はゼリー飲料を一口だけ吸い込み、それから薬を飲んで横になった。目を開けているのも辛そうで変わってやりたくなる。事故のケガもよくそう思ったな…変わってやりたいと…