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「桜…そんなウソ俺に通じると思ってる?怒るよ」
無理に笑い、出にくい声を絞り出して大丈夫という桜に、真顔で言うと
「…ごめんなさ…ぃ」
彼女は掠れた小さな声で俯いた。10~12年前には同じような事が病室で何度もあったと思い出し抱きしめたくなるが今は我慢だ。手に持ったペットボトルを開けてやり飲むようにと渡す。飲み込むのは辛そうだが喉が渇いていたんだろう、休み休み半分飲み干した。
「で?どう?」
「…熱はマシだと思う…頭はふわっとしてて…喉は…」
喉を押さえて左右に首を振るところを見るともう話すのが辛いんだろう。
「お粥作ったんだ。待ってて」
熱すぎても食べにくいので、食べやすい温度に温めたお粥を小さい椀に入れる。たくさん食べて欲しいが、桜は残すまいと無理をしかねない。部屋に戻り体温を確認すると37.7度。朝でこれだからまだ要注意だな…
「口開けて」
お粥を掬いスプーンを口元に持っていくが口を開けない桜に
「熱くないよ、食べて薬飲んで寝る」
一気に言うと諦めたように口を開けた。
「…おいし…」
きっと味はわかっていないだろうが桜はそう言うとお粥を全部食べた。
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