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番外編 10月
9月の新刊発売時に関西の出身大学へ出版社の方と行った際、10月に創立記念講演をして欲しいと依頼があった。月曜日の講演だというので桜に、火曜水曜の休みに関西に来て観光するかと聞くと行きたいと言う。京都がいいと言うが平日でも観光シーズンの京都のホテルなど空いておらず、何とか京都駅から徒歩20分ほどのビジネスホテルを2泊とった。
月曜朝の新幹線で関西入りし11時からの講演を行う。学長や後援会会長等と昼食をし、夕方ホテルにチェックインする。桜はいつもより1時間早い5時に仕事を終わらせてもらい、6時頃新幹線に乗り8時過ぎ京都駅着予定だ。少ない荷物をほどき、桜はもうすぐ新幹線だな…大丈夫か…心配になりメッセージを送る。すぐ既読になるが返信はない。しばらく落ち着きなく待つと‘ちゃんと自分の席に座れたから大丈夫’と返信が来てホッとする。桜は高校の修学旅行にも友達との旅行にも行っていないから俺はいろいろと心配していたんだ。桜に指定席のチケットを渡し何度も乗り方を説明する俺に
「大丈夫、わかったよ。日本語の案内も読めるんだし、困ったら駅員さんに聞くから大丈夫」
と彼女は笑い、今朝もまだ心配する俺に
「賢祐の方が忘れ物とか大丈夫?」
と半ば呆れていた。結局1時間ほどビジネスホテルのそう広くない部屋をうろついたあと、桜の到着1時間前に京都駅に行き、新幹線が何本も発着する人の往来を改札で眺めていた。
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