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そこからタクシーに乗り、町家を再利用したイタリアンレストランに行く。20時30分からの遅めのディナーだったが、ノスタルジックな店内の雰囲気を楽しみながら味わう京野菜が使われ工夫された料理は美味しく、桜も堪能したようで俺も満足した。
ホテルに着くとビジネスホテルが初めての桜は狭い部屋を探索し、その機能的なことに感心した後、シャワーの使い方を確認し先にシャワーに行く。この7年、近場のホテルに数回泊まっただけだからな…桜の世界が広がり彼女が俺から離れるのが怖かった俺は、こうして自分が地方へ行く時にも桜を連れて来なかったし、一緒に旅行も日帰りでしかしていない。今更ながら自分の独占欲に呆れ後悔もする…これからたくさん連れ出してやろう。
「ただいまーカーテンの外側濡らさず出来たよ」
髪を拭きながら当たり前の事を言う桜にまた自責の念にかられ、これから色んな経験をさせてやろうと再び思っていると、これ…と彼女が控えめに声を掛ける。
「…着心地あまり良くないし…入院中を思い出すよね…」
「ちょっと待って」
ビジネスホテルの寝間着を引っ張り、浮かない顔で病院着を思い出す桜に俺のTシャツを渡す。
「ありがとう。これ借りても賢祐明日困らない?」
「大丈夫だ」
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