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翌朝、宿泊客に無料で提供される朝食を感激しながら食べる桜を見ながら一日の計画を頭でなぞり
「行こうか、始めに桜が見たいものを見に行こう」
「うん…私言ったものの…賢祐任せだよ…お願いします」
ぺこっと下げた頭を一撫でし手を繋ぐと歩き出しながら言う。
「桜はキョロキョロよそ見してても俺が目的地まで連れて行くから大丈夫」
「ありがとう」
俺たちはまず妙心寺に向かった。桜が雲竜図を見たいと言ったのでいくつかある寺院から妙心寺を選び、そこから嵐山に向かう予定だ。
雲竜図は寺院の天井に描かれることの多い八方睨みの龍だ。そして今、しんと静まる空気の中で俺たちは上を向き龍と睨み合っている。本当に目が動く…ついてくる…ほんの小さな囁き声で俺に伝えた桜は少しずつ移動する。俺も反対側に移動し立ち止まり、言葉で表現出来ないものが数多く存在することを実感し飽きずに龍と睨み合っていた。
それから広い寺の一部を散策した後、予約している嵐山の湯豆腐店へ向かった。桜は嵯峨豆腐が気に入ったようで
「初めての食感じゃない?舌触りは絹豆腐だけど固さは木綿よりかな?」
「そうだな。豆腐でこんなボリュームあるメニューは想像してなかった」
「大豆の味がしっかりして美味しい」
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